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6.内容等

これまで、医用生体工学は医学の進歩や医療の高度化に極めて重要な役割を果たしてきた。今ではその成果である医療機器無しには高度な医療はできなくなっている。医用生体工学が21世紀における人類の健康の増進、医学・医療および福祉の高度化に必要不可欠であり、医療機器産業が21世紀の重要産業になるであろうことには異論はないと思われる。一方、分子生物学や遺伝子工学の最近の進歩は目覚ましく、近い将来医学を画期的に進歩発展させることが期待されている。医用生体工学はこのような成果を医療に結びつける研究に力を入れなければならないと考えられる。細胞レベルでは分子生物学や遺伝子工学の成果はそのまま利用できるだろうし、いろいろなレベルでこれらの成果をふまえた見直しや新しい発展が期待できる。最もマクロスコピックな生体システムもこれらの成果によってさらに急速に発展させることができるであろう。このように、医用生体工学を如何に発展させるべきか、また、近い将来に著しく発展すると思われる研究領域の現状と展望を解説することが本フォーラムの目的である。

シンポジウムでの講演の内容は、次のようなものであった。

・計測技術における新展開と題して、生体内圧の計測、流れの計測、運動の計測、温度・熱物性の計測、電磁量の計測、科学量の計測など基本的計測対象について、新たな技術あるいは期待される技術に関するトピックスについて

・循環器病の成因の解析、新しい計測法と治療法の開発、さらには分子生物学技術の循環器MEへの導入について

・分子生物学とMEとの関係について、血管系のずり応力適応制御と内皮細胞のカルシウム反応、細胞バイオメカニクスとシステム生理学について

・細胞の持った機能を工学的に制御して物質生産や医療に役立てたり、生体機能をシミュレーションして生体分子を超える人工的な生理活性分子や機能性材料の創製の可能性について

・生体の生体物質に対する磁気の作用、生体磁気計測、およびMRI技術の最近の進歩など生体磁気学がMEに果たす役割および今後の可能性について

・光を用いた生体計測技術に関して、特に脳機能の情報を得る光CTに関して、現状と将来展望について

・中枢および末梢神経系の障害を原因とする神経因性機能障害に対する電気刺激療法に関して、近年の動向と近未来の新しい技術としての発展性について

・脳神経活動を画像化する技術として、計測したい脳内部位に電位感受性色素を注入し、光を用いて脳内活動をみるオプティカルレコーディング技術と計算論的神経科学、さらには脳の高次機能の解明の可能性について

 

 

 

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