これまで、医用生体工学は医学の進歩や医療の高度化に極めて重要な役割を果たしてきた。今ではその成果である医療機器無しには高度な医療はできなくなっている。医用生体工学が21世紀における人類の健康の増進、医学・医療および福祉の高度化に必要不可欠であり、医療機器産業が21世紀の重要産業になるであろうことには異論はないと思われる。一方、分子生物学や遺伝子工学の最近の進歩は目覚ましく、近い将来医学を画期的に進歩発展させることが期待されている。医用生体工学はこのような成果を医療に結びつける研究に力を入れなければならないと考えられる。細胞レベルでは分子生物学や遺伝子工学の成果はそのまま利用できるだろうし、いろいろなレベルでこれらの成果をふまえた見直しや新しい発展が期待できる。最もマクロスコピックな生体システムもこれらの成果によってさらに急速に発展させることができるであろう。このように、医用生体工学を如何に発展させるべきか、また、近い将来に著しく発展すると思われる研究領域の現状と展望を解説することが本フォーラムの目的である。